感謝の気持ち - KOKI YAMADA PHOTOGRAPY

ちょっと長目だが書きたいことがある。
10月1日から新しい2019−2020シーズンのサファリが始まった。
その矢先の昨日夜遅く、僕にとっては、とてもとてもショッキングなニュースが現地から入った。
現地で大人気だった雄の兄弟の一頭が、独立して1年という間もない歳で亡くなってしまったのだ。
縄張り争いで他の雄虎とぶつかり、体中35箇所もの傷を追ったという。あまりにも深い傷もあった様で、重症の状態で発見された。
T-109 Veeru。富士フイルムの写真展では彼の表情をDMに使い、「フラジャイルな存在」というタイトルを付けた。来てくれた方々には、「虎ってこんなに綺麗な表情するのね…。」、「何だろう、この虎の表情見てると涙出そう。」、「本当になんとも言えない、出来ることならギュッと抱きしめてあげたくなる様な表情ね。」と言って頂いた。それだけ彼の表情に思いを寄せてくれた方が多かった。強い存在と思われている虎から感じる別の一面を知ってもらえたことが、何よりも嬉しかった。僕は撮影でいつも動物たちのそんな一面を大事に切り取っているからだ。当時キャプションにこう書いた。
「独立を間近に控えた若い雄虎。何とも切ない表情に心を奪われた。まるで、まだ独立する意思が固まり切っていない様な、そんな弱ささえも感じさせる瞬間だった。」

絶滅に瀕して頭数が減っているのに、虎の縄張り争いが激化する理由。それは森林伐採が彼らの餌場を奪っているからであり、人間が住む場所がどんどん迫ることで彼らの生息地を奪っているからだ。虎は単独で生きていく生き物だ。一生その身一つで狩が出来なければならない。怪我は禁物なのだ。だから本能的に虎同士、闘いを好んではしない。そもそも衝突を避けるか、深手を負う手前で退散するのだ。しかし今彼らは、負けられない縄張り争いに強いられている。闘いに負ければ餌がない場所や人間エリアに出て行かなくてはならないからだ。シリアスな闘いでは、時に2頭同時に命を落とす。今回もVeeruの相手がまだ発見されていない。きっと同じく深手を追っているだろう。考えたいのは、直接的に人間の手が殺さなくとも、間接的に虎を殺す原因が人間によって作り出されているという点だ。この危うい状況は今後ますます加速するだろう。だからこそ、虎が少ない地域や餌場が保てる場所へ、人間の手による移送が必要な状況なのだ。だから今の頭数を保つだけでも、実は多くの人の努力と深い理解が必要になる。そしてそれにはコストも伴う。しかし実行しなければ虎の数は確実に今より減っていくのだ。大事なのは物事の見方だ。虎が争って死んだというのは一つの事実でしかない。だが、その事実から見なくてはならないのは、「そもそも虎が必死に争わなくてはならない状況はどこからやって来たのか?」だ。

映画大国のインドで人気の作品に登場する仲良しコンビJai&Veeru。虎の兄弟はあまりにも仲が良かったので、2頭の名前はそこから付けられた。独立する前はいつも一緒だった。そのじゃれ合う姿が本当に好きだった。撮りながら心が温かくなる瞬間がいくつもあった。忘れられない瞬間をたくさん魅せてもらった。ありがとうVeeru。どうか安らかに。

※後でわかったことだが、少なくとも重傷のまま5日間が経過していた。
サファリシーズンが始まった後の衝突だったら、すぐに発見してもらえ、命は助かったのかもしれない。
数日の誤差が完全な命取りになってしまった。心から残念に思う。