すべてはあなたのためでしかない - KOKI YAMADA PHOTOGRAPY

今から12年前の寅年の2010年7月29日、ロシアのサンクトペテルブルクで開催された国際会議において、その当時、野生の虎が生息していたと言われている世界13の国(インド・ロシア・タイ・ベトナム・ラオス・ミャンマー・カンボジア・バングラディシュ・インドネシア・マレーシア・ブータン・ネパール・中国)は「2022年迄に野生の虎の生息数を倍増させる」ということに合意し、実際に採択された。(いわゆるグローバルタイガーサミット。グローバルターガーデイはここから定められている。)それはつまり、およそ3,000頭まで減ってしまっていた野生の虎の生息数を約6,000頭に増やすという計画だ。

果たして結果はどうなっただろうか?

そもそも2010年時点での推定個体数のカウント方法や、その後のカウント方法が適正であったかどうかで話は大きく変わってしまうが、ただいずれにせよ言えることは、この12年で生息数が減少(絶滅)してしまった国と、ある程度維持できた国があるということであり、少なくとも倍増することはできなかったという事実に違いはないだろう。おそらく集計結果は2022年内かそこから近い内にでも発表されると思うが、個人的には、ロシアの参加有無と、参加したとしても、果たして今年の年頭から戦争に没頭していた国が虎の数を正確にカウントしているとは考えにくい。(調査に必要な資金調達が困難で有ることや、深刻な人材不足が起きていることが予想できる。また、たとえ活動に真摯に取り組んでいる方がいたとしても、戦争がもたらした生活面での変化に直面し、本来のクオリティを継続することが困難であろうと考えるからだ。)ただ、それでもきっと野生動物を愛し、身を捧げて活動し続けている方はいると信じているが、何せ12年前の採択時はプーチン政権であったわけで、目下ロシア最大の関心事は“野生の虎の生息数”ではないことが明白だ。今年2月に起きたミャンマーでのクーデターも気になるところだ。
以前のブログでも過去のインドの歴史を事例に出して書いたが、言うまでもなく、今回のロシアによるウクライナ侵攻やミャンマーのクーデターのように、一見、野生動物の保護とは全く関係が無いように見える戦争・紛争など人間のありとあらゆる行為・政治・決定は、生態系と保護活動の継続やその効果に甚大な影響を及ぼす。なぜなら世界は繋がっていて、自分の国だけで必要な資源・材料・食品などそれら全ての物を満たすことは不可能なのだから。つまり、「2022年迄に野生の虎の生息数を倍増させる」ということに合意したのは13カ国でも、それを達成するには、それらの国から資源・材料・食品などを購入している全ての国の理解と努力がなければそもそも達成できないことなのだ。ここは最も忘れてはならない部分だと思う。

だからこそ、2022年グローバルタイガーデイという12年目の節目にあたり、改めて考えたいことがある。

それは、「12年前、世界は、野生の虎の数を倍増させるということにどんな意味を持たそうとしたのか?」という点だ。

改めて考えて欲しい。

この話、本来誰のための話だっただろうか?

果たして、”虎を保護したい”という目的だけの話だろうか?

もちろんそれは違う。

”野生の虎の数が倍増するということ”
即ちそれは、生態系の頂点に生きる者の数が倍になれる程に豊かな森と、その元に広がる生物多様性が守られているということを意味するはずだ。それはつまり、我々人間を含めた全ての生き物たちにとっても、優しい生存環境が存在するということを意味する。しかし、現状はどうだろう?その真逆ではないだろうか?この12年の間、絶滅種は増加し、生物多様性は失われる一方だった。人間にとっても年々厳しい環境となる一方だった。

”12年後の野生の虎の生息数を見つめるということ”
即ちそれは、「これまでの人間の活動が、地球環境と我々が生きる未来に対してどう向き合ってきたか?」ということそのものであり、「森の象徴である存在を増やすことが出来なかった12年は、森が減り続け、全ての生態系と人間の未来を限りなく危機的な状況に追い込んだ12年だった」と言えるのだ。
綺麗事なしで、悲観的なことを、あえてその様に強く言っておいていいだろう。だって、今の自分達が生きる毎日のニュースに、異常な自然災害が起きない日がない。世界中の人間が毎日実感し過ぎていても、もはや他人事のように「異常が通常」にさえなっているのだから。

今、間違いなく、我々は自分たちの手で自分たちの未来を創っているのではなく、未来への道を絶望的なほどに破壊している。。

じゃあ、どうしたらいいか?自分には何ができるか?
答えはシンプルでしかない。複雑じゃない。
まずここを忘れてはいけないと思う。

森の減少を食い止めるには第一に、
木材、紙資源、パームオイル、天然ゴムなどの生産を、環境に配慮した持続可能な生産方法・生産基盤へと改善していくことが欠かせず、何よりも重要なのは、消費者としてそういったものを選んでいくことだ。野生の虎が生息し貴重な生態系が残存する国から農産物や林産物を調達する日本企業、そういった会社や仕組みを通して購入する我々個人が、森林保全に配慮し生産されたものを選ぶことこそが森を守る重要な鍵なのだ。F S C認証を取得した物やR S P O認証を取得した製品を選んで買ってみることはその具体例になる。もちろん過剰な包装を断ったり、毎日きちんとエコバックを使用することだって繋がる話だ。いずれにせよ、100か0の話ではなく、一つずつできることからやってみれば良い思う。何せそれらは毎日のことで、その効果は、選択品数×頻度×人数の変数だけ影響してくるのだ。

そして第二に、自分自身が不摂生な生活をせず、必要以上を食べず、適度にしっかりと運動をし、健康を保つことだ。これだけでも間違いなく森林環境の破壊を減らし地球のためになる。そしてこれは自分の身体のためにもなるのだから、尚更やらない手はないはずだ。

そして第三に、今手元にある物を大切に使い、無駄に購買しないことだ。少なくとも無駄なゴミを出さないことにも繋がれば、やっぱりそれは直接的に森林環境と地球のためになる。

どこまでいっても他人事は一つもない。逆にすべては、自分自身を守るための話、自分が愛する者を守るための話でしかないと捉えてもらっていいのではないか?それなら行動する動機になるだろうし、結局自分自身にとって一番分かりやすい話となるはずだから。

多くの人にこう考えてもらえれば幸いだ。

すべてはあなたのためでしかない。

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