一期一会 - KOKI YAMADA PHOTOGRAPY

3月下旬にインドがロックダウンされる直前まで、少し長い期間ランタンボールで取材をしていた。
実はインド到着直前、機内で突然、「先ほど、インド政府の発表で日本人に対するVISAが無効となったため当機は着陸後直ぐに引き返します。」と機長から驚きのアナウンスがあった。
僕を含め搭乗していた多くの日本人が「そんな困る・・」「どうなるんだ・・」といった声を不安気にあげ、かなり緊迫感のある状況だった。

結果的に、離陸した時点ではインド政府がVISA無効を発表していなかったという時間差的な理由で、僕が搭乗していた便までの乗客は、メディカルチェックさえクリアできれば入国が許された。(定かではないが、その後の便は数時間差でダメだったと聞いた)しかも次回出国時まではVISA有効という処置だった。ただ、空港はインド政府より突如入国制限を受けた世界中の人でごった返し、相当なパニック状態だった。僕も入国審査だけに3時間を要した。

「とはいえ完全に滑り込んだ
これは何かしら意味があると勝手に思い込み、その後の取材に没頭した。おかげで取材ではとても意味のある瞬間に巡り逢うことが出来た。その時の写真はいずれ皆さんに必ずお見せしたい。

取材期間中、ヨーロッパ、アメリカをはじめ世界での感染が拡大し地域・都市封鎖が拡がっていった。それに合わせ、ランタンボールからもどんどん欧米人が減っていったのを目の当たりにした。
日本では桜が満開に近づきつつも、封鎖説が飛び交っていたので、インドを出国出来なくなる前、且つ、日本に入国制限がかかる前に帰国を決めた。
帰国前日まで取材をしたが、その時点で現地にいる外国人は僕のみだった。
ランタンボールは本当に田舎にあるわけで、個人的には都市部よりも人当たりは柔らかいと感じている。しかし、状況が状況なだけに、あの場所で外国人が自分だけになると、それはそれで急に不安に駆られたのは事実だった。

帰国便に乗るまでの空港パニックも凄まじかった。インドには Japanese ZONEという日本企業の集まる街があるが、おそらく企業よりそこから帰国の命を受けた日本人家族であろう方達が大きな荷物を運び空港に押し寄せていた。僕も何とか空席を確保し、帰国の途に着けることになった。

「次はいつ戻って来れるのか?」

そう考えたあの日からあっという間に4ヶ月が過ぎた。
6
月にはコロナ禍におけるランタンボールでのサファリが再開されたが、6月末で現地シーズン自体も終了した。
もちろん来シーズンも行く予定を取っているが、果たして再開は未定だ。

僕はランタンでの2019—2020シーズンを特定のファミリーを追うことに集中してきた。撮影日数は述べ50日近くに及んだと思う。
それでも、今年再訪できないことで物語が欠けてしまうことは否めない。それは残念で仕方ないが、今はとにかくツーリズムが存在しない期間も虎達が密猟に遭わずに生き延びてくれることを願ってならない。人の目が届かなくなる状況を利用する輩の行為こそは虎にとっての最大の脅威の一つとなるからだ。

僕は最低でも10年間は虎達を追い続けるということ心に決めて撮影をしている。
しかし、コロナを経験した今となっては、同じ虎を追い続けることが出来ていたことを奇跡に感じる。

撮影での出逢いは一期一会だ。

コロナ禍でさらに痛感したこの感覚は、必ず次の撮影に活かされると信じている。

error: Content is protected !!