・命を繋ぐ
この右の大きな写真は、ランタンボールのグレートマザー、T-19/Krishna。実は当初写真展の準備をしている際には選んでいなかったのですが、ギリギリで急きょ入れた1枚。この2月に撮影してきたばかりの写真です。風格があり、どっしりと遠くを見つめている彼女はもう、11歳になります。既に9頭もの子を残しており、アローヘッドは彼女の子です。つまり、左下の写真に写っているアローヘッドの2頭の子はKrishnaの孫になります。
この小さな2頭の子とアローヘッドを撮影した時は、まだ本当に薄暗くて、月明かりが手助けをしてくれました。ちなみに、この日はスーパームーンでした。生後3カ月の子供の虎が人前に出てくることは非常に貴重で、まだ人慣れしておらず、怯える子供達を彼女(アローヘッド)が顔を舐めることで落ち着かせ、安心させようとしていたのが印象的でした。
それは言葉に出来ないほど美しい瞬間で、この瞬間を逃してはならないと言う焦りから手が震えてしまい、思わず深呼吸をして自らを落ち着かせなければならないほどドキドキしました。
Krishnaが懸命につないだ命は、しっかりと次の命を繋いでいます。ご説明させて頂いた通り、虎は種の生存が危ぶまれている儚い存在ですが、このように力強く、懸命に生き抜く姿には本当に心を打たれます。是非、皆さんにも現地で、自分の目で見て頂きたいです。それこそ、僕のように人生が変わる方もいると思います。
・虎への感謝と自分が出来ること
僕がこういった写真展を開催したいと思った理由は、本質的には虎と言う生き物、野生の動物たちに感謝しているからです。辛く、苦しい時期に自らと虎とを重ね合わせ、虎の力強く生き抜く姿に勇気を貰ったことは、お話した通りです。そういった経緯から、自分にしか出来ない役目、使命のようなものがあると勝手に信じています。
野生の動物が生き残っていくには、人間との共存の道を探す他はありません。そのための入り口となる手段として、沢山の人が、大自然や野生の動物、虎を現地に観に行くと言う方法があると思っています。そういったものを観に行って、楽しんで頂いて、現地にお金を落として頂く。これこそが、現地の人と虎にとって最も大切なことです。
悲しいことですが、現代においてはツーリズムのないところは経済優先の開発等の行為によって、自然や野生の動物たちが消えて行ってしまうという現実があります。だから、写真を撮る、撮らない拘わらず、観に行って、楽しんできて欲しいのです。
見に行って何かを感じてもらえれば、人は必ず自然に対してやさしさを持つようになると思っています。そして自然に優しいと言うことは即ち、人にも優しいということに繋がります。
僕はこれからも虎達を撮り続け、最低でも10年間は虎を追い続けたいと思っています。その間、虎という生き物をより深く知るために、他の動物や他の世界に触れることも同時に行うことが大切だと感じています。もしまた僕の活動、想いをお伝えできるような場が頂けたら、その際は皆さまと再会したいと思っています。
長時間にわたりご清聴頂き、ありがとうございました。まだ写真展はやっておりますので、是非ごゆっくりと写真をご覧になっていってください。